「二人の関係がすれ違いだして、ズルズルと時間だけが経った。


高1の冬、年明けの前かな?
忘れもしねーよ。12月のすげー寒い日に
突然連絡もなしに慎吾が俺ん家に来たんだ。
結構雪が降ってんのに、傘もささねーで体冷たくして。
香織に…ふられたって。」



…………………

え……


「他にお付き合いしたい人ができたからって。

そう言われたらしい。」




『………そんな…』




「だけど、慎吾も俺もわかってた。
香織先生は慎吾が重くなって嫌になったからとか、慎吾より良い男見つけたからとかで
そうやって別れを切り出したわけじゃない。


このままじゃ
慎吾も自分も
ダメになるって判断したんだ。

付き合って、そばにいてあげることで
慎吾を支えられる存在だったはずが、

今じゃ自分の仕事で手いっぱい。
支えるどころか、慎吾を不安にさせて
慎吾はどんどん弱くなって…
自分も苦しくなっていく。

いくら好きでも
自分がいることで慎吾がダメになっていったらって考えたんじゃねーかな。


まだまだ未来のある慎吾から
離れることが…
香織先生なりの最後の愛情だったんだよ。」




目の奥が熱くなり喉がツンと苦しくなる。

拓也くんの話を聞きながら

いつしか私は泣いていた。



『………ごめん…なんか、深いなって思って…』





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