「仲が悪くなって離婚したとかじゃない。
死んだんだ。
だからこそ、親父さんが再婚するってことは
慎吾にとって唯一のお母さんの存在を
忘れられてしまうような、寂しい気持ちだったんだと思う。

それから慎吾はいつも通り明るく振る舞ってても、どこか悲しそうだった。

複雑だったんだと思う。

親父さんに新しくそういう相手ができたことで、
自分の本来の居場所にも違和感あったりしたんだと思う…」







慎吾の冷蔵庫はいつも充実してた。


それは、
再婚したほうのお母さんからの仕送りだったんだ。


私なにも知らなかったから、

本当に何ひとつ気にならなかった。

気にも、止めてなかったんだ。





「中3になって、
新しい先生がうちの中学にきた。
保坂 香織って先生で、国語の担当だった。

それが…
すげー美人で、若くて、生徒からも大人気。

実は香織先生は佳乃ちゃんに似てるんだ。」






『え…』




私に似てる…




すぐにあの写真が頭に浮かんだ。



絶対そうだ。



やっぱりあの写真にうつっていた人は、先生だったんだ…





「大学入ってから初めて慎吾に佳乃ちゃんの話を聞いたとき、あいつ言ってたんだ。
香織先生にそっくりな女の子が、隣の部屋に住んでるって。

慎吾があまりにも本気な顔していうから、どんなもんかなーって思ってたけど……俺も焦ったよ、初めて佳乃ちゃんがバイトに入ってきたとき。

言われてみれば似てる。

てゆうか、見れば見るほどすげー似てる!って。」




『…私……その香織先生って人がうつってる写真…実は慎吾の部屋でたまたま見つけちゃって、
見たことがあるの…。』



「え、そうだったんだ!?」


私はコクリと頷く。

『あ、もちろん慎吾は知らないよ。
……うん……確かに私に似てるよね。
私はあんなキレイじゃないけど…確かに似てる。
私もビックリした。』





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