「慎吾の親の話は聞いたことある?」



『ううん、ない。
慎吾の親がどうかしたの?』


「あいつは小さいときにお母さんを亡くして、親父さんに育てられたんだ。」


『え、そうなの!?』



拓也くんは頷いて続ける。


「たしか、小2のときって言ってたかな…?
おばさん、元々からだ弱くて病気だったらしい。

俺は慎吾と中学入ってすぐに仲良くなった。
あいつはその時から人気者でさ、明るいし優しいし男からも女からも好かれてた。

だけど中3になる少し前、親父さんが再婚したんだ。
すげー元気で若々しくてキレイな人と。
慎吾は、すごい良い人だって言ってた。
俺のこと本当の息子みたいに大事にしてくれるし、料理もうまいって。

でもあいつ、ショックだったんだ。

心のなかで
死んだ母さんが可哀想だって思う気持ちが
どうしても強かったんだと思う。」




.