「初めて、男子の自転車の後ろになんて乗っちゃった」
「そうだったんだ」
秦野くんの視線を感じて、私は顔を上げる。
「なんか、悪かったかな。無理やりだったらごめんな」
「ううん、すごく助かったから、全然いいよ」
「そっか」
穏やかな表情で、秦野くんが微笑む。
電車がホームに入ってきた。
私は秦野くんから荷物を受け取って、乗る前にもう一度お礼を言う。
「ほんとに今日はありがとう。応援団、頑張るね」
「うん、頑張って。じゃあ、また明日」
ドアが閉まって、電車が走り出した。
広告のシールに邪魔されない場所から、ホームの秦野くんに小さく手を振る。
秦野くんは、また軽く右手を上げて応えてくれた。
気付くと、また、ほっぺが熱くなっていた。