自転車が動き出す。
漕ぎ始めは左右に揺れて、思わず私は秦野くんに回した右腕に力を入れる。
男子ってみんな、こんな風に力強いものなのかな。
それとも、
秦野くんだから、そう思うのかな。
階段から落ちかけて、お姫さま抱っこで助けてもらった時も。
さっき、立ったまま寝ちゃった時も。
そして今。
二人乗りしてるというのに、軽々と進む自転車。
腕を回して気付いた、秦野くんの、広い背中。
気がつくと、自分は座っているだけなのに、何だかドキドキしてた。
――ほっぺが熱い。
陸上の大会に臨んでる時だって、こんな風になったことない。
私、どうしちゃったんだろう。