「あれ? 藤沢?」 足音が近くで止まって、聞き覚えのある声がした。 ……聞き覚えがある、どころじゃない。 最近いろいろ心悩まされてる、秦野くんの声。 「藤沢、ひとり?」 いきなり声を掛けられて、わたわたしながら答えた。 「う、うん。千里が、まだ来なくて」 「そっかー。じゃあもうちょっと待たないと、だね」 「うん」