「今日は……後ろ、乗る?」

「ううん、一緒に歩きたい……けど、いいかな」

一拍置いて、秦野くんが言った。
「うん、俺も、歩きたかったから。いいよ」


自転車の左側で、秦野くんが自転車を押して歩いて。
それをはさんで右側を、私が歩く。

歩くにつれてゆっくり、後輪の方から、チキチキと回る音がする。
住宅街だからか、辺りは静かだ。


何となく手持ち無沙汰な感じがして、私はサドルに手を載せた。
思ったより高い位置にサドルがある気がする。

「なんか、高いね」

「ん?何が?」

「サドル。いつもこんな高いトコに座って漕いでるんだ」

秦野くんは軽く笑って、言った。
「そんなに高いかな、慣れててあんまり考えてなかったけど」