「このままだと寒いし、駅まで送ろうか」 秦野くんの声がした。 気付くと、ドキドキしていたのもだいぶ落ち着いたようだった。 「うん」 ようやく返事も普通にできるようになっていた。 秦野くんが私のほうに手を伸ばして言った。 「かばん、カゴに入れなよ」 「ありがとう」 私は素直に、秦野くんにかばんを渡した。 秦野くんは私のかばんを、学ランを借りたあの日のように、自転車の前カゴに入れた。