「……、ん、と、……もしかして、さ」

息がだいぶ整ってきて、落ち着いてきた秦野くんが、言った。

「もしかして、藤沢、……会い……に来た、とか、俺に」


きゅん、ってなった。
つま先から頭のてっぺんまで、何かが走り抜けたように。

そしたら何も言えなくなって。

私は、秦野くんのことを見つめ返したまま、
こくっと頷くことしかできなかった。

「そっか」
秦野くんが、包帯を巻いた右手で鼻の下をこすりながら、少し笑って言った。

「すげー嬉しい」