ケータイを閉じてから少したった時。
私が迷いながら通ってきた来た道の向こうから、自転車の音がしてくるのに気付いた。
公園の入り口まで勢いよく近づいてくると、音の主はブレーキをキュッ、と鳴らして自転車を止めた。
やっぱり、秦野くんだった。
「……、よかった、無事で、……っ、はぁ、はぁ」
秦野くん、ものすごく自転車飛ばしてきてくれたのかな。
だってこんなに、息が荒くて、白い息で顔が見えなくなるくらい。
「あの、ごめんね、無事です」
わたわたと顔の前で手を振りつつ、思わずヘンな挨拶をしてしまった。
「や、大丈夫……。公園で独りでいるって思ったら、心配で」
秦野くんは自転車から降りながら左手を挙げて私を制して、続けた。
「で、……なんでこの公園に?」
「……迷っちゃった」
信じてもらえるかどうか判らないけど、正直に言う。