体育祭の次は、文化祭という大きな行事が待っていた。


俺は元々お祭り騒ぎは好きじゃないので、とりあえず割り振られた仕事だけをこなした。
手先の器用なヤツや普段は目立たない女子が活躍している。
うん、適材適所ってやつだな。
俺は大道具系、飾りつけ系を担当させてもらって、このお祭り騒ぎを傍観する形になっていた。


以前の俺なら、藤沢と同じグループで仕事ができることを喜んだはずだった。
今はこうして、裏方の隅っこの方で、彼女に見つからないように黙々と作業している。

別に逃げ隠れする必要はないじゃないか。
もう一人の自分が、そう言っているのがわかる。
でもどうしてもダメだった。


――藤沢の足手まといにだけはなりたくない。


この思いが、彼女との距離を開かせる。
尻込みしてしまうのだ。


藤沢のことが好きで、好きで、大好きで。

だからこそ、俺じゃない他のヤツと……、


本当はそんなのイヤだけど、でも。


藤沢の笑顔を見ていたいから。
はじけるような藤沢でいてほしいから。
そのままの藤沢が好きだから。


――どうすりゃいいんだ。くそぅ。


俺はもつれた毛糸のような気持ちを抱えたまま、教室をにぎやかに飾り続けていた。

(第三章終わり)