ちょうど応援席の目の前を走り抜ける位置だ。
おー、とか、すげぇ!とか、聞こえてくる。

身長差も歩幅の差もこんなにある男女が、ほとんど同じ勢いで走っていくのだ。
かなり人目を引いていたのは間違いなさそうだ。
応援席のあちこちから、声援が聞こえる。

「陸上部、負けるなー!」
「ちっちゃい子、がんばれー!」

インコースは秦野くんに取られたので、すぐ外側を全力で走る。
秦野くんも本気で走っているのが判る。気迫が伝わってくる。
でも、負けられない。
えぇい、陸上部の底力、見せてやるっ!


コーナーの出口で秦野くんの真横に並び、そのままの勢いで直線コースに入って秦野くんの前に出る。
よし、このままトップでゴールできる!

「茜ーっ!」
待ち構えている部長の声が届く。
アンカーの部長に一位でバトンを渡して、私はコースから外れた。