咄嗟に腕を出してガードしたが、魔力によって強化された蹴りの威力は腕一本では防ぎ切れず、青年の身体は吹き飛ばされた。


地に足をしっかりと付けて、壁に激突する寸前に身体が止まる。


指を動かし異常がないか確認する。


腕を出した時、瞬時に魔力の膜を張ったおかげで骨に異常は見られなかったが、あの一撃は危なかった。


生身で受ければ、骨がやられたというレベルではすまなかっただろう。


腕どころかガードした頭をも貫いて、今頃生首が出来上がっていたかも知れない。


青年……否、若き頃の肉体を得たイアンは満足そうにほくそ笑む。


喪失魔法―無限剣舞―


一点集中の高出力魔法。この魔術の弱点は空間転移。


対象者が術の範囲内から出てしまえば、簡単に抜けだすことが出来てしまう。


腐っても四聖官。そう簡単に片付く相手ではない。


「こうなるのがわかっていれば、あの時に始末しておけばよかった。アモスの件といい、私は身内に弱いらしい」