そこに立っていたのは白髪の老父ではなく、白銀の髪を靡かせる青年の姿。


だがサイは動じることなく、冷静に今の状況を分析する。


―――なるほど、死者蘇生の応用術とはよく言った物だ。


死者を蘇らす喪失魔術。


専門分野である生体魔術と喪失魔術を見事に組み合わせ、イアンは“若き頃の肉体”をこの世に呼び戻したのだ。


若き肉体であれば、サイの魔術にも自身の魔術にも耐えられる。そうイアンは判断したのだろう。


「驚いたか? 私もこの姿を拝むのは実に四十年」


「無限剣舞」


イアンの言葉を無視し、サイは術を唱えた。


イアンの全包囲をドーム状に覆う鮮血色の無数の刃。


喪失魔術『無限剣舞』


アモス賢者が保有していた禁書に記されていた喪失魔術。それが今目の前で展開されている。