怒りを通り越し、サイは憐れんだ。
やはりなにもわかっていない。現状も現実も。
自分の置かれている立場も。
「貴方が私に敵うとでも?」
冷淡な声色でサイが問う。
イアンとはいえ、相手は歴代最強の四聖官と謳われるサイ賢者。
多種多様の攻撃魔法を有するサイに対し、イアンの得意とする魔法は肉体強化を主として生体魔術。
生体魔術のエキスポートであったため死者蘇生の喪失魔術を会得することが出来たのだろうが、相性が悪い。
まともにやりあえば、イアンに勝ち目はないだろう。
今のままでは……。
「確かにこの肉体では、君の魔術には耐えられないだろう。それどころか、私自身の術にも耐えることが出来ぬやもしれん。だがな」