禁書自体にかけられている封印術を解き、禁書に記されている喪失魔術の理論を解き、禁書の魔力と自身の魔力を一体化させて、ようやく喪失魔術が発動できる。


ここで問題なのは理論の解読。


特殊なインクで書かれた理論式は、常に魔力を注がねば見えぬようになっている。


しかも理論式にはブラフも存在する。


魔力の量と質によって幾つもの理論式が浮かび上がる仕組みになっており、本物の理論式を浮かび上がらせるにはそれなりの魔力を注がなければならない。


ただでさえ難解な理論を、魔力を消費しながら解読。


並みの魔術師では禁書を手にした所で、喪失魔術を会得することは叶わない。


例えそれが賢者であろうと、禁書の解読には数十年という長い年月を必要とする。


まして年老いたイアンには、解読するだけの膨大な魔力も時間も残ってはいない。


せめて魔力の消費という縛りさえなければ、数年あれば事足りるだろうが……。


「十数年前から異様に聖者候補生の数が増えていておかしいとは思っていたが、そういうことだったのだな」