国の心臓部であり国民も多い主要都市を守るのは軍として当然のことだ。


警備も頑丈で、いつ魔物が襲撃してもすぐに応戦できる準備は整っている。


魔王によって統率が執られた魔物達なら、都市に攻撃をしかけることは回避するはずだ。


よって被害は、警備が手薄な田舎に向けられる。


戦う術を持たぬ人々が、抵抗することもなく殺される。


イアンは目を丸くしたかと思うと、口の両端を吊り上げてクックと笑い声を溢した。


小馬鹿にした嫌な笑み。顔には信じられないと書かれている。


「なにを言うかと思えば、まさか君の口から青臭い道徳観を聞かされるとは予想だにしていなかったよ。
まさかとは思うが、君は本気で言っているのか? 税もロクに収めぬ人間になんの未練がある?
我が国に必要な人材は、高い魔法技術を持つ者と税を納める納税者だけだ。滞納者など人ではない。家畜だ。
それに家畜など放って置いても勝手に増える。間引きした方が世のためだとは思わんか?
寧ろ彼らは光栄と思うべきだ。自らの血で世界の秩序が保たれる。誇るべき死だ。君もそう思うだろう?」


「……言いたいことはそれだけか」


怒気が籠った声色で、サイは続ける。