薄暗い牢獄。


鉄格子の窓から見える月明かりが唯一の光源。


特殊な手錠を嵌めた男は、壁に背を持たれ銀色に輝く満月を仰ぎ見る。


静かな空間。どこからか漏れ出した水滴の滴る音と、ドブネズミの駆けずり回る足音しか聞こえない。


すると、コツコツと靴音が牢獄内に反響した。


オレンジ色の明かりが徐々に近づく。


男は目深く被ったフードから、珍客を覗き見た。


フードの隙間から見据える金色の瞳が移したのは、鉄格子ごしに立っているまだ幼さが抜けきれぬ少年。


手にはランプを携えて、男に真っ直ぐ視線を向ける。


絡み合う視線。男は自嘲気味に微笑むと、視線を外しまた紺青の空に浮かぶ月を眺めた。


哀愁を帯びた姿。しかしどこか決意を込めたような姿。


少年はランプを掴む手に力を込める。