そして裏切った。全てを知る一人として、追われる宿命を覚悟しながら。
「アモス賢者も気付いたのだろう。この計画が無意味なものだとな」
イアンのこめかみがピクリと動く。
「無意味? なにが無意味というのかね? “死者蘇生”は死者を蘇らせるだけではなく、その支配権さえ得ることが出来る最強の喪失魔術だ。無論魔王さえ例外ではない。
現に永久の安息は約束されていた。魔王復活計画がバレることがなければ」
「安息の時などない!」
イアンの言葉を遮るように、サイの声が辺りに響く。
常に冷静で感情を露わにする性格ではないサイが、語気を荒げた。
イアンは口を閉ざし、二の句を待つ。
「恐怖政治には常に血が必要だ。血によって恐怖が生まれ、恐怖によって治安が生まれる。ならば貴様達はその血をどこで確保している? 答えてみろ!」
魔王の被害は、主に山間部の農村地帯。
他の国の被害も、大抵は都市を避けた田舎に集中している。