次に戦地になるのはおそらくネシオル。勝っても負けても、ネシオルが被る被害は想像を絶することとなる。


負ければ敗戦国として苦汁を飲まされ、勝ったとしても疲労した所を第三勢力に襲われる。


とはいえ、長い歴史の中で生まれたわだかまりを解消する手などない。


互いに競い、争い、軍事力を得ることによって大国へと発展したネシオルとアモール。


今更和解など到底かなわぬ夢。


血の歴史が、それを拒む。


「だから我々は考えた。魔王を復活させ、再び世界に恐怖を植え付ける。そしたらどうなると思う? 未知なる敵に遭遇した時、人は互いに手を取り合い結束が生まれる。
例えそれが憎むべき敵だとしても、共通の敵が生まれることにより、憎しみの矛先がそちらに向けられる。
結果は君も知っている通りだ。ネシオルとアモールは半永久的な休戦条約を締結し、以後魔王と魔王軍を討伐すべく実質的な協力関係を結んだ。
我々は完全なる安息の時を手に入れたのだ。それの何が悪い? 君もあの男のように反旗を翻すと言うのかね?」


あの男とは、アモスのこと。


世間では勇退としてされているが、実際は裏切り行為による地位剥奪。


イアンの言動からして、アモスもこの計画に関わっていたのだろう。