一件タダの変わった鍵。


だが、なにか不思議な力を感じる。引き寄せられる。


勇者の直感がそうさせるのか、またはミウの言葉を信じてみたかったのか。


そっと鍵の先端を扉に近づけると、パリンッというまるでガラスが割れたような甲高い音が目の前で響いた。


結界が破れた?


半信半疑でさらに鍵を近づかせると、今度は弾かれることなく鍵の先端が扉の取っ手に接触した。


結界は破れている。


取っ手を引いて扉を開ける。


拓けた空間は壁に本棚が配置され、古ぼけた分厚い本が所狭しと置かれている。


部屋の中央には黒のテーブル。背もたれが高い椅子が二つ。


もっと禍々しい空間だと思っていたが、予想よりはまともな部屋だ。


もっとも、黒一色の空間に慣れてしまったからそういう感想に至ったのだろう。