「血液やその他諸々をちょっとね。純血の勇者のサンプルはもう手に入らないから、この機を逃す手はないだろ?」


『お前……よく勇者に気付かれなかったな。エクターの能力を使ったのか?』


「ん? 彼にはこのこと伝えてない。伝えた所で反対するだろうから、ちょっと細工をね」


口元から零れる笑みは、どことなく黒味を帯びている。


我ながら外道だなぁと独り言のように呟くが、電話の相手は乾いた笑いをするしかなかった。


というより、もう笑うしかないだろう。


『さすが“神眼”俺もお前だけは敵にまわしたくねぇや』


「ははっ。で、話を戻すけど勇者は今夜発つ」


『そうか……頂上に挑むのか』


「僕達もね」


後三日。


後三日で、二カ国の最高戦力が激突する。