アグロに勇者の身体的特徴はない。


髪は黒いがどことなく茶色が混じっているし、瞳の色も金色ではない。


遠い血縁に勇者の一族がいたのか。いずれにせよ隔世遺伝の類だろう。


「今だ!」


アグロが大声を発する。


サイは背後を振り向くと、炎に包まれた刀を手にしたボールスの姿が見え、その手にしている刀には強い魔力が込められている。


ボールスは刀を地面に突き刺すと、


「劫火葬!」


天を突き刺す火柱が立ち昇った。


アグロごと巻きこんだ巨大な火柱は、渦を巻きながら熱風を辺りにまき散らす。


魔力を著しく消費したせいか、ボールスは両膝をついて荒く息を乱した。


燃え盛る火柱に視線を移すと、火柱の中から人影が写る。