ギーノ村。
ジャンケの街からほどなく離れた小さな村で、家畜が盛んな村である。
決して豊かというわけではないが、ここは魔物襲撃がほとんどなく平和な村である。
村から少し離れた小高い丘に建つ一軒家に、コーズという十八歳の青年が住んでいた。
大人びた容姿ではあるが明るく大らかで、だけどちょっと抜けている。だれからも好かれる青年である。
幼いころに家族を失い、今は妹と二人暮らし。
コーズは日課としている羊の世話を終え、食材を買いに村里にまで降りていった。
商店の主人と談笑をしながら必要な食材を物色していると、主人が「森に行ってヤギに食わす薬草を取ってきてくれねえか」とコーズに頼んできた。
なんでも家畜のヤギの乳の出が悪いらしく、森に生えている薬草を食べさせたいのだと言う。
とはいえ最近の森は魔物が現れ始め危険である。
コーズも最初は断ろうと考えていたが主人が熱心に頼むので、バイト代を弾むという条件でお使いを引き受けた。