部屋に戻ったマリは、薄暗い室内で傷ついた右手に包帯を巻いている。


テーブルの上にはコーズの遺品。


次第に現実を受け入れ始めたが、それでもコーズの死は未だに信じることはできなかった。


否、信じたくないといった方が正しいだろう。


もしかしたらこれは夢なのかもしれない。


コーズが車の中で二人にからかわれているあの夢が本当は現実で、こうして悲しみに暮れる現実が夢なのだと。


それでも右手の傷はズキズキと痛み、コーズの死が現実であることを無情にも知らせている。


もし私が付いて行ったら、未来は変わっていただろうか?


そんなことを想像したところで、今が変わるわけじゃない。たらればなど意味を成さない。


ふと、視線を向かいの扉に移した。


扉が半開きになっており、小さな光が隙間から漏れ出している。


中にはオレオが一人。そこはコーズと共に使っていた寝室だ。