エクターはしきりにタイマーをチェックする。
洞窟に入って時間が経つが、未だに魔物と遭遇しない。
自分の住処に侵入した不審者を、凶暴な魔物達が放っておくだろうか。
と、視線を伏せていると、土色の足元に黒い染みを発見した。
足を止めて染みの先を目で追うと、そこには強大なトカゲが倒れている。
全長は約一メートル。緑色の巨体はすでに死に絶え瞳には色がない。
慎重に近づくと、エクターはトカゲの身体にそっと手を触れた。
「……温かい」
手の平に伝わったのは、生きていた証。
死んでそんなに経過していない。
原型が保っていることから、弱肉強食の類ではないだろう。
魔物以外の何者かが倒したと考えるのが妥当。