果たしてそれが吉なのか凶なのか。


少なくとも生き地獄に変わりはない。


あれだけの猛攻を喰らいながら生き永らえたのは、魔物の力もそうであろうが、もう一つ決定的な要因があった。


それはアモス自身が一番わかっている。


―――儂の魔力が弱まっておるのか。


偉大な魔術師も老いには勝てない。


喪失魔術の威力はこんなものではない。


本来の威力であれば肉体は一片も残らず、さらには余波でこの岬を海の底に沈めていたはずだ。


力をセーブしたつもりはない。アモスが持ちえる全力を尽くした結果がこれだ。


「アモス様、後始末は僕がやりますので先にお戻りください。お身体に障ります」


日は傾き始め、肌寒さを覚える。


果たしてこの悪寒は潮風によるものなのか、それともまだ幼い少年がなんの躊躇もなく発した辛辣な言葉によるものなのか。