「アモス様、これは?」


「儂からの些細なプレゼントだよ。アモール帝国に行くには必要不可欠であろう」


アモール帝国は海を挟んだ遥か東に位置する大陸を領地している。


魔法技術に優れたネシオル王国には、遠く離れた大陸への異空間移動を可能にする魔具も存在するが、異空間移動には様々な制約があり、さらには国と国との移動を可能にする魔具は闇市場にすら出回ることはなく、そのほとんどを王府が管理している。


ましてネシオル帝国とアモール帝国は現在休戦中。


敵国関係にある相手に、異空間移動を可能にする下準備を行うわけがない。


もっぱらこの二国の間の交通流通手段は、海上を進む船しか残っていない。


その船も、王府御用達の特別船を除くと、月に一度の定期便しかない。


「魔法石を仕込んだ帆船じゃ。三日もあればアモール帝国に付くと思うぞ」


このプレゼントはまさに天からの恵みと言っても過言ではないだろう。


「すげぇ、ありがとなアモス様。帆船なんて初めて乗るぜ」


内陸部出身のコーズは本物の海を見るのも、帆船を見るのも初めてであった。