深い深い森の中。
辺りは見たこともない大木が立ち並び、僅かな木漏れ日が地に下りてくる。
地面には雑草が生い茂り、可愛らしい花の一つも見当たらない。
野生動物の息遣いすらも感じられないほど、この森は静寂を保っていた。
聞こえてくるのは、風に揺れる葉音のみ。
まさに樹海と呼ぶに相応しい山奥に、オレオとマリの姿があった。
結局マリに酷い目にあったが、オレオは主人の頼みを承諾したのだ。
一食の恩どころではない寛大っぷりに、マリはほとほと呆れた。
優しすぎるにもほどがある。自分の命をなんだと思っているのだ。
呆れを通り越して怒りすら沸いてくるマリだったが、とはいえ引き受けてしまったものは仕方ない。
最初はオレオ一人で行く予定だったが「一人で行かせるのは危険だ!」とマリの猛口撃に合い、オレオとマリの二人で森に入ることになった。
こう見えてマリは魔術の心得があり、魔具の補助なしで様々な魔法を唱えることが出来る優秀な魔術師なのだ。