夜が明ける。
なにが起こったのか、まだ幼い少年は理解できないでいた。
目の前に広がるのは、一瞬にして廃墟と化した村。
建物は崩れ、木々は焼かれ、辺りは静寂を保っている。
焦げ臭い不快な異臭で、気を失っていた少年は目を覚ました。
瓦礫の僅かなスペースにいた少年は、奇跡的にかすり傷一つおってはいない。
今は瓦礫の山となっている自宅から這い出ると、真っ先に母の名を叫んだ。
返事はない。
呆然と立ち尽くす。辺りを伺うが、自分以外の人間は見当たらない。
一人ぼっちの空間。少年を助ける者は誰もいない。
少年は家の瓦礫を手で掻き分けながら必死に叫んだ。
破片で手を切り血が流れるが、母の名を呼び続ける。