銭湯前で、再び男と出会う。

「おお、昨日ぶりやんけ」

男の隣には、着物姿の少し赤みがかった髪の色の女がいた。

「あら、ラヴィヌス、お久しぶりです事」

知り合い、か。

待て、ラヴィヌスだと?

「あなたは」

渚を見ると、驚きようが尋常ではない。

僕は、渚の前に出る。

「だから、昨日から言ってるやろ。あんたが攻撃せえへんかったら、こっちも攻撃せえへん。穏便に行きたいわけや」

「お前の事は解った。だが、後ろの女は何者だ?」

再び渚が驚いたという事は、因縁とは別の相手だろう。

「あなた、私の名前を聞く前に、自分の名前も名乗らないのはご無礼じゃなくって?」

妙な威圧感が漂っている。

「神崎耕一」

「耕一さん、ね。ふふ、ふふふ、ははははははは!」

狂ったように、笑い出す。

「何が、おかしい?」

「あなたが自分の母親と交わっているから、可笑しくて可笑しくて」

「母親?」

女の行った台詞がよく解らない。

「ラヴィヌスはさぞ気分がいいでしょうねえ。愛する息子と交わる事が出来たのですから」

渚を見ると、俯いているようだ。

事情はある。

だが、着物の女を見ていると、気分が悪くなってくる。

「渚が母親だろうがどうでもいい。お前は、何者だ?」

「あら、失礼しました。私、夏川山女(なつかわやまめ)と申します。本名は、デザイア、ラヴィヌスとは同郷なんですのよ」