にっ、逃げなきゃ…。
「わっ、私ちょっとトイレに行ってくるっ」
急いで立ち上がって、部屋から飛び出した。
―――――――………
――――――………
【‥流騎side‥】
急いで部屋から飛び出したちびを見て、思わず笑っちゃった。
何も怖いものなさそうで、全てのことを完璧こなす会長だったから、
余計に可愛さを感じた。
「会長の枕いい匂いする~♪なんだろ、シャンプーかな~?」
葵はちびの枕に顔を埋めつくしてる。
…本当、落ち着くわこの部屋。
「会長の部屋って、こう、女の子らしいよな」
咲人がニヤニヤしながら言うと、要はフッと笑った。
「…あいつらしい」
………そういえば。
ちびの好きなタイプって、要みたいな奴だっけ。
「…要って、会長のこと、好きなんだっけ?」
俺がそう聞くと、
「えっ!?そうだったの!?」
なぜか葵が飛び上がった。
「…別に」
要は参考書をカバンにしまいながら言った。
…………嘘つけ。
さっきだって妬いてたくせに。
「流騎は絶対好きだよね」
葵はあくびをしてからそう言った。
…好き…?
俺が?
「てかあいつトイレ長いな」
咲人は頭を掻きながらせう言った。
「いや、逃げただけだろ」
要って、無口だけどよく周りを見てるよな。
「めがねちゃんの怖がってる顔、見たかったのになぁ~」
「葵、ちょくちょくS出るよね」
「あっバレた?♪」
…好きなのか
分かんないけど、
…ほっとけないんだよな。
【‥流騎side・End‥】
学年順位、一位。
そう書かれてる通知表を見て、とりあえずほっとする。
テストはついに終わり、学年順位が出た。
みんなでお勉強会(正確に言うとただのDVD観賞)何度か開いたけど、
あれは無意味だったんじゃないかと思われる。
「会長会長っ、何位だった!?」
通知表を持ってやってきたのは葵君。
「一位だったよ」
なんかこれ言うの、結構照れ臭い。
「すごっ!やばっ!やっぱり会長って頭いいんだねっ!!!」
急にグッと顔を近づけてきた葵君に、ドキッとした。
「あ、あのっ…」
近いです。
そう言おうとしたら、あたしと葵君の間をさえぎるように、流騎さんがを差し出してきた。
「近いよ葵。会長困ったじゃん」
……助かった。
葵君は口を尖らせてごめんと呟いた。
「会長やっぱり一位?」
「あっ、一位です」
「そうなんだ。やっぱり会長ってがんばり屋さんだね」
あたしの頭をくしゃくしゃと撫でる流騎。
………認めたくないんだけど。
……本当に、認めたくないんだけど。
最近、流騎が少し、
少しだけだけど…
――かっこいいと思ってきた。
「…どうした?そんなに俺のこと見つめて」
流騎に顔を覗き込まれて、心臓は大きく波うった。
「なっ、なんでもないです…」
急いで流騎から離れ、席につく。
熱くなった頬っぺたを、手の甲で冷やす。
最近のあたし、
……変なんだ。
なんか、少しずつ、
変わってきてるっていうか…。
自分でもよくわからないけど、何かが変化してるんだ。
「あのさ、もうすぐ夏休みじゃんか。みんなで俺んちの別荘行かないか?」
咲人はあたしの側にきて、そう言った。
「行く行くー!」
葵君、元気だなぁ…。
「俺も行こっかな」
流騎と葵君もあたしの側にくる。
「要も行くだろ?」
「あぁ。行く」
要君もこっちに来て……、って。
「なっ、なんですか?」
なんでみんな、あたしを見てるんだ?
「会長も来るだろ?」
…って、えぇえーっ?!
「その、みんなって、あたしも入ってるんですか!?」
「当たり前だろ♪」
ニカッと笑う咲人を見て、あたしはびっくり。
夏休みに、別荘か…。
楽しそうだな……。
「…行って、いいの…?」
恐る恐る聞くと、咲人は一瞬びっくりした顔を見せて、次の瞬間、
「あぁ!」
満面な笑顔を、見せてくれた。
「楽しみだなぁ~♪会長とお泊まりだっ!」
「葵、変なこと言うな」
「会長のパジャマ見れる~♪」
「葵、変態だな」
葵君と要君の会話がおかしい…。
でも、楽しみだな…。
よし、っと。
「ふぅーっ」
荷物をまとめ終わり、あたしはベッドにダイブした。
明日から一週間、
みんなと別荘で過ごす。
パパには、ダメって言われるかなぁと思ったら、満面な笑顔で、
「行ってらっしゃい!」
って言われた。
まぁ、それで良かったけど。
♪ブー、ブー
「………?」
要から電話だ…。
「はい」
『あ、俺。要』
「あ、うん。どうしたんですか?」
要君から電話かかってきたのは初めてだ。