私は…………



掟を受けとめる。



そして――


棗を一途に想い続ける。




そして――…



ひまわりになる。






「……ん……り……ん……凛!」



「え、あ、何?」


全然聞こえなかった……


「大丈夫か?」


棗は優しすぎるんだよ。


だから抱いてはいけない恋愛感情を持ってしまったんだ。


でも……



棗のおかげでひまわりにちょっと近づけた気がする。



「大丈夫。ありがとう。今日は抱くの?」


流石に今日は抱くだろう……





「あぁ。疲れてねぇか?」

「大丈夫。」


いちいち私に気を遣うことないのに……


「そうか。」


棗は私に優しく触れる。



まるで繊細な硝子細工に触れるように……


「………ウッ………ゴホッッ………ゴホッッ……オエッッ…」


いきなり吐き気に襲われる………



なんで――



「凛!大丈夫か!?」


「………大丈夫。気にしないで……ゴホッッ………ゴホッッ………」


「凛、お前もしかして………」


妊娠してる……?


でも………


今お父様に伝えたら――




間違いなく、莉緒と結婚する事になる……



そんなのやだ…………







「棗…………抱いて……」

棗に抱かれれば、棗と結婚できるんだ………



「……お前、そんなんで無理に決まってるだろ…」



いやだよ………



いや…………




莉緒が嫌いなわけじゃない………


でも………



でも、私はっっ


「……棗が………好き、なの……」


頬に涙が伝うのがわかった……



「………俺もだ。でも抱く事はできない。お前辛いだろ……」



「優しすぎるんだよ棗は………お父様に嘘ついてくれる?棗が最後だったって……」



本当はこんなことしたくない………


でもこれしか方法が無い………










――2年後――






――…

あれから私たちは嘘をついて


婚約を交わした……



2年たった今でも嘘はばれてはいない。



あの時嘘をついて良かったと私は思う。



――今がとても幸せでひまわりになれたような気がするから……………








私と棗の間に生まれたのは

女の子だった。



名前は未羽。

未知なる力を持ち、己の羽で飛び立って欲しいという願いから名付けた。



「凛、未羽寝たぞ。」



「ありがとう。棗。」



今でも棗は優しすぎるくらい……優しい。






「明日は結婚式だな。」


「そうだね……私ひまわりみたいに一途になれたかな……?」



今までずっと願っていたひまわりに……



「凛は最初からひまわりだったんじゃねぇの?」



「クスッ、最初からひまわりだったのかもしれない。」


棗のおかげで気持ちが凄く軽くなったよ。





「ありがとう、棗。」


棗に聞こえない小さな声で呟いた。



「結婚式、緊張すんじゃねぇぞ。」


「棗が緊張するんじゃないの?」


「しねぇよ。」




「クスッ、そっか。ねぇ、棗?私ね…………凄く幸せだよ。ありがとう。」




「俺も幸せだ。愛してる、凛」



「「クスッ」」