エレベーターは
使わずに
階段で先回り
マンションの
玄関で
いつもみたいに
会って
お互い、
ちょっとびくつく
(私は確信犯)
いつもなら
自転車に乗って帰る
彼の背中に
私が
「バイバイ」を
言うんだけど
その日は先回りしたし
もっと話したくて
「中学、頑張ってね」
でもそれだけ
それだけしか
出てこなかった
彼はいつかみたいに
ぽりぽり
頭をかきながら
「…ん。ありがとう」
そのあと、
「お前も、頑張れよ」
あんまり笑わない
彼が
今までで
一番優しく笑って
私泣きそうで
自転車にまたがった
彼に
少し照れくさそうな
小さな男の子に
「ありがとう。
バイバイ」
いつもみたいに
笑って言いました
いつもと違ったのは
私と彼が
向き合ってたこと
それから
走り出した彼が
一瞬振り向いたこと
私がもう一度
バイバイを言ったこと
…私が、
彼を好きだと
気づいたこと