「えぇ、空兎の言う通り。ちょっとした心当たりがあるのよ」

 そう前置きしてから、セレビアはその真剣な眼差しを三人に向けて話し始めた。

「単純な話よ。私逹以外にも“本”・・・・・・いえ、“奇跡を起こせる宝”を狙っている連中がいるってこと」

「誰なの!?」

 顔が密着するくらい身を乗り出した空兎が訊くと、セレビアは溜息をついて首を横に振った。

「さぁ、具体的に何者かは私も知らないわ。ただ、空兎がコンビニに置き忘れた“本”を私が拾った時も力ずくで奪おうとした連中がいたわ。
 さっきの奴とその連中が何か関係あるのかは知らないけど、一つ言えることは、“本”の価値を知っていて、欲しがる人が他にいるってことよ」

 そこまで聞いて、空兎はその場に立ち上がって、「フフン!」と鼻を鳴らし、不敵に、 しかも、どこか楽しそうに言った。

「つまり、私達『空兎の愉快な冒険隊』のライバルってわけね!」

 本人にとっては何気ない一言だったのだろうが、『空兎の愉快な冒険隊』という部分に、一同は、空兎を見上げた。

 ジョーとセレビアの気持ちを代弁するかのように、仙太が尋ねた。

「なに、さも前から決まっていたとばかりに、さらりと言ってるんだよ?」

「ん? なんのこと?」

 自分の問題発言ぶりがわかってないのか、空兎は小首を傾げた。

「だから『空兎の愉快な冒険隊』のことだよ!」

 少し声を荒げた仙太の心情など、まるで気にしていないと言った感じに空兎は「あぁ~」と納得したような声を出して、すぐに口角をニッと吊り上げた。

「私達のチーム名よ! やっぱ必要っしょ! こういうの!」

 えっへん! と言わんばかりに胸を反らす空兎。
仙太は再び絨毯に顔を沈め、セレビアは、ますます口を丸くしてポカンとしていた。唯一、好意的なのはジョーで、パチパチと手を叩いて賛美している。

 仙太はまた顔を上げて、一応、訊いてみた。

「そのネーミングの意味は何かあるのか?」

「ここにはヒーローに魔法使いに凡人がいるんだよ! 愉快じゃん! それに分かりやすい名前っしょ?」