「そ、それは、また・・・モノによっては大変なことになりそうですね」

 思わず唖然となるジョーと共に、セレビアも困り顔。

「でしょ? これが最大の問題。まぁ、こればかりは創造者のセンスがまともであることを祈るしかないわね」

 そうぼやくと、仙太が若干、俯き加減になってこめかみを片手で押さえながら内心で嘆いた。

(多分、まともなセンスは期待できないと思う・・・・・・)

 “本”の最初の方に、無駄にデカデカと書かれていた文字を思い出して、そう予感した。
 だが、一人楽観的なメンバーは、確かにいた。

「まぁまぁ、なんとかなるよ!」

 沈み気分の仙太を、空兎は肩を叩きながら励ました。

「クリームだらけの口で言われてもなぁ」

 細くした目で、小さく皮肉を漏らす仙太だった。
 そんな、賑やかな会話を繰り広げられている中、ウェイターが一人、空兎逹のテーブルの前にふらりとやって来た。

「こちらをお下げしてもよろしいですか?」

 店の制服の帽子を深々と被り、極力顔を見せないようにしているそのウェイターが、空兎の空き皿を差しながら尋ねてくる。

「あ、お願いしま〜す!」

 パフェの味に顔を綻ばせながら空兎が答えると、ウェイターは手際よく空き皿を・・・・・・取らなかった。

 取るフリをして、テーブルに置かれていた“本”を掴んだのだ。

 瞬間、空兎たちのテーブルで、

「あっ!」と、セレビア。

「お?」と、ジョー。

「えっ?」と、仙太。

「んぅ!?」と、パフェを口に含みながらの空兎がそれぞれの反応でざわめき立つ。

 その頃にはもう、あのウェイターは、“本”をガッチリと腕に抱え、店へと飛び出していた。
 店内誰もが一瞬、呆気にとられた中で、空兎だけはすでに身体が動いていた。

「ふぁて~~!」

 口に含んでいたパフェの生クリームを、叫びと同時にテーブルに撒き散らした後、座っていた椅子を踏み台にして、他の客のテーブルを八艘飛びよろしく。転々と跳び移りながら、店の出入口までいき、そのままあのウェイターを追いかけていった。