それをテーブルに置くなり、その様子を見ていたジョーが口を挟んだ。

「口に物を含んだまま喋るのは行儀が悪いですよ」

 そう、やんわりと窘められた空兎は口内の食べ物を飲み込んだ後、「ウィッス!」と良い返事をした。ちなみに、仙太もジョーと同じことを注意しようと思っていたが、

(僕だったらこんな素直な返事はしないだろうな・・・・・・)

 等と、つい卑屈なことを考えてしまう。
 複雑な心境で、少し胸が苦しくなった。

 そのせいだろうか、仙太がすぐに話題を元に戻した。

「“鍵”を探すのにも、この“本”が必要なんですか?」

「えぇ、とても大事よ。唯一の手掛かりだからね」

 答えながらセレビアは自分が注文したシーフードパスタを一口、フォークでクルクル絡めてから優雅に口に運ぶ。それから一呼吸置いてから続けた。

「いい? 前にも話したけど、“本”には魔法使い・・・所謂、術者によって、魔法による封印がかけられてるの。そして、それを解くのは同じ術者が魔法で創った“鍵”。・・・・・・二つの共通点は同じ術者による魔法ってことなの。ここまではいいかしら?」

 仙太というよりは、些か理解力に劣りそうな空兎やジョーを中心として告げるセレビア。

 だが、そんな心配はなく、三人がほぼ同時に頷いくと、セレビアは満足そうな笑顔で続ける。

「魔法にも“癖”ってのがあってね、術者によって魔法の“感じ”が違うの。例えるなら、そうねぇ・・・」

 何か上手い例はないかと、思考を巡らせているセレビアの隣で、ジョーが口を挟んだ。

「美術品や工芸品みたいなものですか? 作り手によってそれぞれ特色があるみたいな」

 その言葉にセレビアは指をパチンと鳴らして、それを肯定した。