「どう?」

 モデル気取りの立ちポーズを決める空兎の格好に、仙太は目を丸くした。
 紺のジャケットにハット。白いシャツを着たカウボーイにもスタイルだが、下は紺のミニスカート。

(某冒険洋画の主人公のつもりか?)

 仙太が内心でそう思っていると、空兎が、ウィンクを決めて尋ねる。

「似合う?ってか萌えた?」

「え・・・・・・あー・・・」

 言葉は濁すものの、率直な感想として仙太は、可愛いとも、コスプレ染みた格好も似合うと思ったので、照れつつもそれを口にする。

「似合う・・・・・・かな」

「うん! サンキュ!」

 サムズアップで返礼する空兎。
仙太は、一つ咳払いをして気を取り直してから尋ねてみる。

「で、荷物の準備はできた?」

「・・・・・・あ」

 一瞬にして、笑顔が凍りつく空兎に、仙太の表情が徐々に険しくなる。

「『あ』じゃない! まさか、ずっと服に夢中だったの?」

「ふふっ、さすがせっちん! 鋭い勘ね! ・・・・・・ずばりその通りよ!」

 ズバッと指を差す空兎に、仙太はこめかみを引きつかせた。

「僕を持ち上げてもダメ。さっさとやる!」

「いっ、イエッサー!」

 穏やかに見えても、阿修羅の如き仙太の迫力に圧されてか、空兎は軍人のように背筋を伸ばして敬礼して、すぐに自分の荷作りを開始した。

 しかし、最初は自分一人でやると決めた空兎だが、どうにも上手くいかず、結局は、最後には仙太に手伝ってもらうことになり、二人で色々揉めながらも、なんとかリュック一つに纏め終えた。

 気が付けば、待ち合わせの場所に行くのに頃合いの時間になっていた。

 二人は紗恵美に挨拶して、ヒーローと魔法使いとの待ち合わせの場所である自分達の学校へと向かった。

「楽しみだね!せっちん!」

(僕は不安だけどね・・・・・・)