「とにかく、二人とも気を付けてね。ジョーさんに迷惑かけちゃダメよ?」

「わかってるよ、母さん」

「了解っす!」

 二人の返事に、紗恵美は満足げな笑みを浮かべた。
医者という身で、このゴールデン・ウィークも仕事がほとんど詰まっている紗恵美は、折角の連休に二人を何処にも遊びに連れていけないことを心の中で気にしていた。

 そんな矢先に提案された旅行イベント、それも信頼できる人の同伴なので、紗恵美にとっては願ってもないことであり、安心して許可を出せたのだ。

「楽しんできてね!」

「うん!」

 元より全力で楽しむつもりの空兎は素直に返事したが、仙太は前途多難を予感して、沈黙した。

 空兎は、満腹になるや否や、すぐに自分の部屋に飛んでいって支度を始めてしまった。後片付けは仙太と紗恵美任せである。

(まぁ、空兎に片付けさせたら、台所を泡風呂にされかねないからなぁ)

 楽しげに洗剤を無駄に使いまくる空兎の姿を想像して、仙太は苦笑した。どのみち食器洗いは仙太担当なので、そこら辺は納得している。

 手際よく食器が片付け終えると、仙太も自室で準備を始めた。
必要最低限の物だけを、ショルダーバッグに詰め込むと、学校に行くときの荷物よりは少し重いくらいで、移動はしやすい程度で済んだ。

(空兎のことだから、余計な物詰め込みまくって、鞄を膨らませてるんだろうな・・・・・・)

 そんなことを思いながら仙太は、自分の荷作りを終えて空兎の部屋の前へと訪れた。

 とりあえずノックをして、呼び掛ける。

「空兎~。準備できたか?」

 だが、返ってきたのは「んふふ〜♪」という、怪しい笑いだった。思わず沈黙する仙太。

 数秒後、再びノックしてみる。

「空兎、入るよ?」

「んふふっ、いいよ~♪」

 不気味さは拭え切れないが、とりあえずドアを開けてみる。

 そこで仙太が見たものは・・・・・・。