「・・・・・・・・・」

 バタン!

 今しがた開いたばかりの戸を閉める仙太。

「ん? どったの? せっちん」

 奇怪な仙太の行動に疑問符を浮かべる空兎に、仙太はそっと尋ねた。

「空兎。こういう時、僕はどうすればいい?」

「んあ?」

 空兎の疑問符は増えるだけだった。
 仙太はゆっくりと深呼吸を一つ。心を落ち着かせてからもう一度、戸を開いた。

 まず視界に入ったのはあの受付の女子上級生。ニッコリとした笑顔で仙太に会釈する。ここまでは普通だ。

 だが、次に視界に入ってきたものを再確認して仙太は深く溜息をついた。

「幻覚じゃなかったな・・・・・・」

 仙太ができれば幻覚であって欲しかったのは、長テーブルの窓際に並んで座っている二人の存在のことだ。

 一人は男性で見覚えがある。緋上ジョーだ。

 頭には包帯が巻かれており、身体のあちこちには湿布やガーゼが貼られている痛々しい姿だ。ちなみに病衣を着ていたりもする。

 もう一人は見知らぬ女性だが、明らかに場違いだとわかる。

 艶やか雰囲気に、長い金髪に眼鏡。OL風の灰色のスーツを着ているまでは普通だが、スーツの上に身長より大きな黒いローブを着ていることで異質を放っている。

(心落ち着かせても、どう反応して良いか、わからないものだな・・・・・・)

 ちなみに他に生徒はいない。
 そんな不思議空間に迷い込んだかのように茫然自失してしまう仙太の後ろから空兎がヒョコッと顔を出した。

「お、ジョーさん! それから魔法使いさんも! チィーッス!」

 二人の姿を確認するなり、中指と人差し指だけの敬礼で挨拶する空兎。
 ジョーは爽やか笑顔、もう一人の女性、「魔法使いさん」ことセレビアは艶やかな笑みを向けた。

(こんな不思議空間に全然動じず、むしろ受け入れている空兎が少し羨ましい・・・・・・)

 一人困惑している自分が空しくなった仙太だった。