「お任せあれっ!・・・・・・左!」

 再び放たれた炎の弾丸を、紙一重で回避。二人の息はピッタリだ。
 それがセレビアをさらに苛立たせた。

「バン! バン! バン!」

「右! ちょい屈んで! ジャンプ!」

 セレビアの連続攻撃にも、空兎は的確に指示をしてジョーが迅速に動く。
 地面のあちらこちらに火柱が立ち昇るが、ジョーは至って無傷で済んでいる。

 焦りや苛立ちでセレビアの狙いが徐々に雑になっているのも原因の一つだが、やはり空兎とジョー、二人の阿吽の呼吸が噛み合っているのが最大の要因だろう。

 そして、一同は広々とした公園を抜け、車や人通りの多い通りに出た。
時刻的に遅刻ギリギリで駆け足気味になっている学生や会社社員がチラホラと見える。

 それらに混ざってジョーは全力で走っていく。もちろんその珍妙な姿は嫌でも注目を浴びるが、当人二人は気にしていない

 だが、セレビアは違った。彼女はなるべく目立つことを嫌い、人気のない公園から人通りが多い通りに出るなり、箒から降りて立ち止まった。足では追い付けないのはわかっていたからだ。

「逃げ足の早いヒーローだこと・・・・・・」

 歯痒い気持ちを嫌味に乗せるセレビアだが、諦めたわけではない。すぐに次の手を考える。

 目立つことを気にして、飛行での追跡を断念した割には、歩道の真ん中で、魔法使いの格好をして考え込むポーズをする美女の姿は否がおうでも目立っていた。


§


 一方、人目を気にせず、走り続けているジョーに、抱き抱えられたままの空兎は勝ち誇った笑顔見せた。