「あなた・・・何者!?」

 できるだけ平静を装った口調だが、突然の乱入者にセレビアは溢れんばかりの怒気が向けている。

「あ、すみません。突然お邪魔して。なにせこの空兎ちゃんが大変な目に遭っているって聞いて、居ても立ってもいられなくて。あ、僕は緋上ジョーといいます」

 爽やか笑顔で飄々と語るジョーの口調が、さらにセレビアの神経を逆撫のか、一気に頭に昇った血を抑える事ができず、セレビアは怒鳴った。

「関係のない人は消えなさいっ! これはその娘と私の勝負なのよ!」

「す、すみません! お邪魔したのでしたら謝ります! ですが大変な目に遭っている方を放っておくわけにはいきません!」

 そう言ってジョーは懐からまたあのテレビヒーローの仮面を被り、

「そんな人を助けるのがヒーローですから!」

 そう告げるなり、空兎を抱えたままセレビアに背を向け走り始めた。
 奇抜な彼の言動に、セレビアは数秒、時間を凍らせながらも、箒にまたがり、空中から追跡を開始した。

 鬼ごっこの第二ラウンドの火蓋が切って落とされた。


§


 空兎を抱えながらも、逞しい走りをするジョー。ヒーローの真意はさておき、身体能力はそれなりに高いようだ。

 空兎は相変わらず、ジョーに対して憧れの眼差しを向けている。

「さっすがジョーさん! やっぱりヒーローだね!」

「いやぁ、それほどでも」

 ヒーローお面で表情は見えないが、明らかに照れている声色だ。

「あ、でも、アタシがピンチって何でわかったの? ヒーローだから?」

「いえ、仙太くんでしたっけ? 彼に頼まれたんですよ。君を助けてやってくれって。無事、こうして空兎ちゃんに辿り着けたのはヒーローの勘ですが!」

「え・・・・・・せっちんが?」