すると、マリィはマリィで、それを待っていたかのように小さな愛らしい笑みを漏らす。

「じゃあ、とりあえず私もクヲンさんと同じで」

「なっ!?」

 驚きのあまり口があんぐりと開いてしまうクヲンなど気にせず、マリィは楽しそうに続ける。

「クヲンさんと一緒に学校行ったり、クヲンさんと一緒にあの人達のお手伝いを勝手にしたりと……」

「まてぇぇぇぇい! ……つーか、ちょっとストップ!………お前、正気か?」

「はい、いたって正気です。だって言ったじゃないですか」

 一呼吸置いてからマリィは、昨日のあの瞬間のような雰囲気で告げる。

「クヲンさんと一緒に飛びたいから、私は悪魔でい続けることを選んだんです、と。ダメですか?」

 そう言われてクヲンは、大きな溜息をついた。
 昨日の今日なのに、それを忘れていた自分に呆れてしまったのだ。

「……いや、ダメじゃねぇけどさ。……お前、高校の編入試験とか大丈夫なわけ?」

「大丈夫ですよ~。私、クイズ番組に出てくるクイズなんかは結構、分かるほうですから!」

「あれと一緒にするなよ。ったく、そんな調子じゃ、“奇跡”でも起こんない限り、高校には通えないぜ?」

 呆れ口調のクヲンに、マリィはあの台詞を強気に吐く。

「起こしてみせますよ、それくらいの“奇跡”!」

 ぐっと親指を立ててみせるマリィが、ちょっとだけ頼もしく見えてしまった自分に苦笑するクヲン。

「ったく、誰に似てきたんだかな……」

 だが、ポツリと零したその口元は、嬉しそうに綻んでいた。
 例え、それが困難なものであるとわかっていながらも、彼自身、心がワクワクしてくるのが抑えられないのだ。

「え? 何か言いました?」

「いや、何にも……」

 顔を覗き込んでくるマリィから白々しい微笑で目を反らすクヲン。
 
 起こしたい“奇跡”が見失ってしまった自分に、新しい起こしたい“奇跡”。
いや、この場合は、起こしてあげたい“奇跡”だろうか?

どちらにせよ、新しい冒険が見つかった。
 それが、とてつもなく嬉しくてたまらなかった。

「どーやら、俺も…いや、元々似ていたのかもな、アイツに」