§


「いっちゃいましたね……」

「……いっちまったな」

 どんどんと見えなくなっていくセレビアを、これ以上追いかけるのを諦めてその場に滞空しながら見送る者が二人。

 白き天使の翼を生やしたクヲンと、黒き悪魔の翼を生やしたマリィだ。

「ま、また会えるだろうさ。つーか、会いたくなくても会うことになるだろうな」

 あの人は諦めちゃいねぇだろうし、と、クヲンはそう呟いてからまるでそこにソファーがあるかのように頭に両手を枕にして寝そべる格好になった。

「なぁ、マリィ……。お前、これからどうするんだ?」

「え?」

「あいつらからの監視はなくなって、お前は事実上、自由になった。これからどうするんだよ?」

 くるりと、クヲンが首をマリィのほうへと向けると彼女は顎に指を当てて何やら考えている素振りをしていた。

 だが、その実、彼女は何も考えていなかった。

「クヲンさんは、どうするんですか?」

「質問を質問で返してんじゃねぇぇぇぇぇっ!!」

 脱力のあまりそのまま急速落下しそうになりそうになった身体をツッコミという気合で持ち直したクヲン。リラックスした体勢はすっかり崩れてしまった。

 それでも、クヲンの答えをニコニコとして待っているマリィに負けてか、クヲンは呆れつつも頭をボリボリと掻きながら答える。

「多分、変わらないよ。………今までと同じ。学校行ったり、あいつらの手伝いを勝手にしたりと……」

「あいつらって、どっちのですか?」

 灰山たち? それとも……

 ワザとらしく問いかけているマリィの目を逸らしてクヲンは意地でも教えてやるかと、笑って、

「さぁな」

 と、不敵に答えた。