あえて計画が少しだけ捻れてしまった点は、あまりにも空兎や仙太と一緒にいる時間が居心地良すぎたことだ。

 だからこそ、ここで妙な気を起こさない内に決着をつけなければならない。

 例え、この勝負で空兎を手にかけるようなことになろうとも……。

「頼むから、マリィ……俺の邪魔をやめてくれよ」

「嫌です。今の私は、空兎さんの冒険隊の一員ですから」

 クヲンの心情を知って知らずか、マリィの返事は素直なものだった。

 深く、大きくクヲンは溜息をついた。

「すっとぼけた笑顔がムカつきやがる……本当は全部わかってんじゃないのか?」

「全然ですよ。だって、クヲンさん何も話してくれないんですもの」

 そりゃそうだ、とクヲンは笑った。“奇跡”を起こせる宝、“神杯”の存在を知り、それを調べるうちに思いついた計画。

 半ば人質であり、常に組織の監視下にあったマリィに話せるはずもない。だから一人で進める必要があった。

 今、この時を置いても組織の誰かがどこかで聞いているとも限らない。

「……わーーった、もう何も言わねぇ…。お前が邪魔するってんなら………」

 クヲンは、大鎌を振り上げて、マリィの槍を弾き返す。

 そして、頭上で一回転。力強く風を切ると、改めて刃をマリィへと向けて構えた。

「ちょっと懲らしめてやるぜ」

 改めての宣戦布告に、マリィは相変わらずの微笑みで応えた。

 華麗に、壮麗に、まるでバトントワリングを魅せるかのように槍を舞わせて風を切る。そして矛先をクヲンへと向ける。

「それじゃ、私も張り切っていきますね」

 クヲンは苦笑いをしながら、突撃を開始する。少し遅れて、マリィも突撃した。


 二つの刃が激突する。