「ふわぁ、綺麗ですねぇ~」

 初めて見る湖の神秘的な美しさにマリィは感激していた。その横で空兎がまるで自分の所有地のように「でしょ!」と誇らしげな様子な態度を見せている。少し離れた後方で仙太がそんな空兎を苦笑していた。

 まるで危機感がない空兎にセレビアは一抹の不安を感じていた。

 手頃な大きさの岩に腰掛けている彼女は、呑気な空兎を呆れた視線で追いながら小さくため息をついた。

「大丈夫かしら、あのコ……」

「大丈夫だと思いますよ」

 同じく、手頃な大きさの岩に腰掛けているジョーがその呟きに返す。セレビアの視線がジョーに移った。

「本当に奴等が来ると思う? あんな電話で?」

「さぁ、でも、空兎ちゃんは空兎ちゃんの考えが何かあるのでしょう。僕はそれを信じていますよ。それに、それはセレビアさんも同じじゃありませんか?」

「私も?」

「でなきゃ、あの絨毯で僕らをここまで連れてきやしませんよ。空兎ちゃんを信じたからこそ、そうしたのではありませんか?」

 言われてみればそうかもしれない、と、セレビアは心の中で小さく思った。

 少なくとも一人だったらあのアジトへ特攻するだけだったが、今の空兎にセレビアは何かを期待していたのだ。

 口には出せないが、その気持ちだけははっきりと自覚していた。

「まぁ、協力するって言ったからね……」

 そう、強がることで、ジョーへの返事は誤魔化しておいたが、ジョーはセレビアの心情を見透かしたような微笑を浮かべている。

 それが少し気に食わなくて、セレビアはついムッとしてしまった。