「せっちん……あのね……」

「もう、いいよ、空兎」

 何かを言おうとする空兎の言葉を仙太は敢えて止めた。聞かなくても分かる気がしたからだ。

 複雑な笑みと、かなりの葛藤をしながら、仙太も覚悟を決めた。

「僕も、一緒にいくよ。君を放っておけないからさ」

「え、でもさ……」

「反対禁止。したら、こっちも全力で空兎を止めるから」

 そこだけは譲れない、といった仙太の表情に空兎は返そうとした口を慌てて閉ざした。その少し間抜けな姿に周りの一同はクスクスと小さく笑った。

 空兎が気恥ずかしさを誤魔化すためなのか、急に大声を上げた。

「よぉーし! 新メンバーのマリィも加わって、空兎の愉快な冒険隊、出発よ! あ、ちなみに隊内恋愛はOKだけど………せっちん、マリィにはちゃーんと彼氏がいるんだから狙っちゃダメよ!」

「何で僕が名指しなんだよ?」

「?」

 ぼやく仙太の横で、マリィが「意味が分からない」という風に首を傾げた。

「それじゃ、さっそく行くわよ」

 セレビアが号令をかけた途端、空兎が「待って!」と止めた。そして、何か考えがあるのか、ポケットから自分の携帯電話を取り出し、そのサブディスプレイをジーッと見つめた。


§


 突然な鳴り響いた着信音でクヲンは目を覚ました。どうやら横になっていたらいつの間にか眠っていたようだ。

 音に驚きながらも、それと分かると「どうせまた灰山からだろうと思い」一応確認する。だが、サブディスプレイに映った着信相手の名前を見て、クヲンの目は驚愕に見開いた。

「空兎……?」

 まさかの相手に息を呑む。途端に緊張し始めた。嫌な汗をかき始める。

 たっぷり逡巡している間も着信音は鳴り響く。

 クヲンは、携帯電話を開いて、通話ボタンを押した。