笑顔を見せて宣言する空兎に、セレビアは呆れたため息をつく。

「バカね。“鍵”を本来の形に戻した時点で、あなたはもう条件から外れた。わざわざ危ない橋を渡ろうとするなんてね……それに私は自分の“奇跡”を譲る気はないわよ?」

「わかってる。でも、アタシはアタシの叶えたい“奇跡”がやっと見つかったの。それは、誰にも譲りたくない!」

 今の空兎の言葉には、確かな強い意志が込められていた。

「もちろん、セレビアさんにもね♪」

 そして、一変して魅力的なウインクを見せる空兎。セレビアは眉を寄せて敵意を向けた。

「随分と下手な交渉ね。それで私が協力すると思っているの?」

「ん~、やっぱ、甘いかな?」

 屈託ない笑みで照れる空兎に苦笑するセレビアは、「そうね」と短く返して、少し黙考する。

 そして、セレビアは決断を下した。

「いいわ。協力………というより、利用させてもらうわ。“奇跡”を叶えるのは早い者勝ちよ。それでいい?」

「OK!」

 セレビアの条件に、空兎は力一杯の笑顔とサムズアップで答えた。

 その笑顔にセレビアの表情が思わず綻ぶ。

 初めて会った時から空兎には、いつの間にかペースを崩されてしまう。しかし、セレビア自身、それを楽しんでいる。

(やっぱりこの子、面白いわ)

 だからこそセレビアは協力する気になった。利用するという建前で。

 もちろん“奇跡”を譲る気はないが、それ以外、例えば彼女が危険な目に遭えば助けるくらいは協力しようと考えた。

「よーし! そんじゃあ、朝御飯も食べたし、早速、出発だね!」

 まるでピクニックにでも出掛けるような気分で言う空兎に仙太が慌てて側に駆け寄る。

「ど、どこへだよ!? まさか危ない所じゃないだろうな!?」

「話聞いてなかったの、せっちん。危ない所だよ。でも、大丈夫! せっちんは留守番していていいから!」

「全然、大丈夫じゃない!」

「うわん! 耳元で怒鳴るの禁止ーー!」