空兎と仙太の散々な日曜日。
 それは、夕食前のひとときである今も現在進行系で続いていた。

 仙太の母、紗恵美が調理中のスープのコンソメの香り漂う甲斐浜家。
 のどかな夕食前の一軒家の二階、空兎部屋の隣、仙太部屋でその二人は揉めていた。

「どうするんだよ? “本”の返却日は明日だよ!」

 仙太が怒鳴ると、空兎は頭からプシューと煙を吹かしかけない勢いで捲くし立てた。

「だぁぁって! 取りに行ったら警官のオッチャンが入ったらダメって言ったんだもん!!
 そんで「きっとトイレにあるから取ってきて、オ・ジ・サ・マ☆」って、色気1500パーセントで頼んだら探してくれたけど、「なかった」って言ったんだよぉぉお!!
 あれ、絶対、あの本に魅了されて渡すのが惜しくなって嘘ついたんだよ! なんだって“奇跡の起こし方”って本だもんね!
 だから強制突入しようとしたら、後からやって来たせっちんが止めるしさぁぁあ!!」

「当たり前だ。そんなことしたら公務執行妨害かなんかで逮捕される」

「おにょれ国家権力ぅ~! きっとあの本で“奇跡を起こす宝”を知った警察はその圧倒的組織力を使って捜索するつもりだよ! そして宝を手に入れた警察は奇跡を起こして世界征服をするんだよ!」

「どこぞの悪の組織じゃあるまいし……というか、よくそこまで妄想を飛躍させられるな?」

「妄想じゃない! 15歳女子高生の勘よ!」

「それは当てにならない勘に認定だな」

 ズバッと言ってのける空兎を仙太は一蹴し、それた話を戻した。