「確かにその大切な人は亡くなりました。そして僕に「死にたくない」と、はっきり言いました。本当ならばその人のために“奇跡”を叶えたらいいのでしょうが、僕には本当にそれが正しいことなのか分からないのです」

 はっきりとした口調でジョーが告げると、突如として空兎が叫び出した。

「正しいとか、正しくないとかいいよっ! ジョーさんは、その人と会いたくないの!?」

 迫力のあるその問いに、あくまでジョーは変わらない優しい口調で返す。

「会いたいですよ。でも、“奇跡”は一度しか起こせないんですよね?」

 空兎が頷く。

「僕には今、生きて、恐らくは想像もつかない苦しい思いをしている人を犠牲にしてまで、死者を蘇らすことが大切なこととは思えないんですよ」

 優しく、強く、はっきりとジョーは言い切った。

 案にそれは、迷ってると言ったばかりの自分の言葉を否定する形となったが、ジョーに微塵の後悔はない。

 それに対して、空兎は小さく呟いた。

「分かんないよ」

 と。それがあまりにも力なく聞こえて、何を意味するのか、一同には判別しづらいものだった。

 ジョーの答えが正しいものかどうかの意味なのか、それとも───


 何が正しいことなのか分からないの意味なのか………


 ともかく空兎は、それからしばらく口を閉ざした。

 少し、重い空気の中、またあの間抜けな音が鳴り響く。


 ぐぅ〜〜


「お腹……空いちゃいましたね」

 今度はマリィの腹の虫だった。

「そういえば朝御飯まだでしたね。あ、緋上さん達は食べました?」

「いいえ」

「まだよ」

 仙太の問いに微笑みを浮かべ応えるジョーとセレビア。

 仙太は今から二尾の鮭を追加した。